所有者不明土地の解消に向けて、民事の基本法制が見直しになりました。
自分自身の勉強も兼ねて、見直し内容をちょっとずつ紹介していきたいと思います。
今回はたぶん一番注目を浴びていると思われる「相続登記の義務化」について簡単に紹介したいと思います。
任意だった相続登記
これまで、不動産を持っている方が亡くなった場合の相続手続きについては、
財産が多い方のみ相続税申告を10カ月以内にしなければいけませんでしたが、
相続登記には期限がありませんでした。
そのため、
- 先祖代々の土地に家を建てる時に銀行から相続登記が必要と言われた
- 土地を売ろうと思ったら相続登記が必要と言われた
- 一周忌が終わって整理しようと思った
といったキッカケがないと、なかなか相続登記はされず、
不動産の名義は父母の代どころか祖父母、さらに曾総祖父母の代のままになっているということまで発生していました。
また、相続登記をする際には費用もかかりますので、
最低限自分が住む土地建物だけ登記して、利用していない山林の名義はそのまま登記しない
というケースもありました。
しかし、その状況で長い年月が経ち、相続未登記の不動産が増加することで、災害発生時の用地買収がスムーズにいかず復興の妨げになったりするなど、相続登記を任意にしおてくことの問題がだんだんと増えてきました。
相続登記が義務へ
そこで、令和6年4月1日~相続登記の申請が義務化されることになりました。
新しい条文は次の通りです。
不動産登記法 第七十六条の二(相続等による所有権の移転の登記の申請)所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。 )により所有権を取得した者も、同様とする。
条文をざっくり要約すると、
「不動産を相続したら3年以内に登記してね」
ということです。
そして、守らないとどうなるのかというと、
正当な理由がなければ10万円以下の過料が課される可能性があります。
法務省の資料には、「正当な理由」として次のようなものが挙げられています。
- 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
- 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
また、簡易に申請義務を果たしたことにできる「相続人申告」という制度が予定されています。ただし、この制度を利用するかどうかはよく考えていただく必要がありそうなので、次回書きたい思います。
※ 法務省の民法等改正のまとめサイトはこちらからご確認いただけます → https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
※ こういう記事にありがちですが、本記事は改正法施行前の情報に基づいて作成していますので、記事が古くなると内容が合わなくなるかもしれません。どうかご了承ください。
(執筆担当者:司法書士 西森由紀)